こんにちは、ころはの店主です。
経年変化とは、年月が経つにつれて物の状態が変わっていくことを指し、特に陶器に見られる特徴です。
磁器とは異なり、陶器は使うたびに染みや色の変化が生まれます。
まるで「器が育つ」ように感じられませんか?
今回は、陶器ならではの「経年変化」とその楽しみ方をご紹介します。
“経年変化”を楽しむ|陶器の魅力
陶器は長く使うほどに色が深まる「経年変化」を楽しめます。
革製品と同様に、陶器も使い込むほど独特の風合いが増し、魅力が深まります。
特に毎日の食事で使う陶器は、スープやカレーなどの料理によって少しずつ変化していきます。
日常の中で、唯一無二の風情を楽しめる素材といえると思います。
陶器は「陶土」と呼ばれる土を用いて作られるため、釉薬と土の収縮率の違いにより「貫入」と呼ばれる細かなひび割れが発生し、これが経年変化の要因となります。
たとえば「粉引(こひき)」の器は吸水性が高く、貫入に水分がしみ込むと表情が変化し、色合いも徐々に広がります。
粉引の器は特に経年変化を楽しみやすいタイプです。
使い続けることで「器を育てる」感覚を楽しめるのが陶器の魅力ですね。
経年変化の実例|陶器を「育てる」楽しみ
それでは、経年変化によって実際にどのような変化が起こるのか、具体例をご紹介いたします。
例① 粉引のカレー皿
この粉引のカレー皿は、淡い黄味がかった色合いが特徴。
長く使うほどにカレーの色がしみ込み、器に深みが増します。
吸水性が高く、使うたびに独自の風合いが生まれます。
例② 貫入のマグカップ
貫入のあるマグカップに、コーヒーや紅茶を注ぐと、内側に染みが残り、やがて模様のように浮かび上がります。
長く愛用するほどに、その変化が外側にも現れ、陶器ならではの風合いが一層豊かに感じられます。
経年変化で美を感じる|日本の美意識
「経年変化」と「経年劣化」は異なり、「経年劣化」は品質が低下することを指しますが、「経年変化」は自然な美しさや独自の味わいが加わることを意味します。
日本では古来から、錆や欠け、汚れといった経年変化にも美を見出す「さび」や「わび」の文化が根付いてきました。
さびは物の外見的な変化の美しさを、わびは心の豊かさや内面的な美を表し、双方の価値観が日本の美意識を育んでいます。
陶器を使い込み、経年変化の魅力を受け入れ楽しむことは、心の美を育むことにもつながるでしょう。
新しい器も素敵ですが、使い込むほどに独自の風合いが生まれる経年変化した器もまた、魅力的です。
長く使い込むことで、自分だけの「育った器」に成長し、愛着もひとしおですね。
経年変化と金継ぎ――どちらも、器の美しさをより深めていくものです。
長い年月をともに過ごした陶器や木製品は、いつのまにかその表情に独特の味わいを宿し、使い込まれるほどに美しさを増していきます。
そして金継ぎ。これは、ひびや欠けを金や漆で丁寧に修復する技法。
破損すらも「味わい」として受け入れ、器をもう一度美しく生き返らせてくれるのです。
経年変化が器にその時々の思い出を刻むように、金継ぎもその修復箇所を新たな美として生まれ変わらせます。
両方とも、日本の「時間が育む美」を尊ぶ心を感じさせますね。
このように、経年変化や金継ぎを通して、うつわは時とともに唯一無二の存在へと育っていきます。
日々の暮らしの中で、その変化をぜひ楽しんでみてください。