こんにちは。”ころは”店主です。
様々あるやきものの中で温かみのある白い器に「粉引《こひき》」と呼ばれているものがあります。
白い粉を引いたように見えることから「粉引(こひき・こびき)」や「粉吹(こふき)」、また白化粧土を施していることから「白化粧(しろげしょう)」とも言われます。
朝鮮半島で焼かれた白い陶器が粉引の由来であり、当時は高価であった白磁の美しい白に憧れ、赤や黒の土で形作られた器(素地)に白い土(化粧土)を施したことがこの技法の始まりとなり、日本にも伝来しました。
粉引の魅力
粉引には、素地と化粧土の乾燥時や焼成時の収縮率が違う等の理由から間に隙間ができ、剥がれ落ちや、隙間に水やよごれが入りシミになりやすいという特徴があります。
それが弱点であると同時に、愛用しているうちにもたらされる変化であるため、使い込むほどに唯一無二の部分が見えてきます。
日本への伝来以来、剥がれ落ちは「虫喰い」、水のシミは「雨漏り」と呼ばれ、粉引が茶人に愛され続けているのも、それが所以なのでしょう。
また、釉が行き届かず素地が露出して焼けてしまった濃い色の部分は「火間(ひま)」と言いますが、一見器の傷に思えるそれも愛好家にとっては粉引が持つ面白みであり趣深さでもあります。
白化粧土にまつわる技法には粉引の他にも、素地に白化粧土を刷毛で施す「刷毛目《はけめ》」や、素地の表面にヘラやスタンプで彫り込んだ部分に白土を埋め込み、模様を浮かび上がらせる「三島・三島手《みしま・みしまて》」、白化粧土を部分的に削り落とし素地の色を模様として表す「搔き落とし《かきおとし》」等があります。
やきものには「信楽焼」「美濃焼」「丹波焼」のような産地の名前がつくものがありますが、「粉引」とは技法の一つですので、産地に関わらず、日本の各地で多くの作家が粉引の器を作っています。
様々な作家の粉引のうつわ
「粉引」と一言でいっても、素地となる土の種類、化粧土の調合、焼き方で様々な粉引のうつわが生み出されます。
作家はそれぞれ理想的な粉引きを生み出すため、独自の方法で表現をしています。
ここでは当店にて取り扱いのある様々な作家の「粉引」をご紹介します。
くるり窯さんの「粉引」
くるり窯さんの粉引はやさしい温かみのある白とマットな質感が特徴です。
ほっこりと手に馴染むやさしい雰囲気です。
伊藤豊さんの「粉引」
伊藤豊さんの粉引は素地の赤土の鉄分が表面に表れ、自然灰の釉薬が少し青みがかった色合いになっています。
整然と彫られたしのぎ模様も特徴です。
平厚志さんの「粉引」
白い肌からふんわりと文様が浮かび出る独自の技法で作られています。
やさしい粉引の色合いが特徴です。
荒賀文成さんの「粉引」
荒賀文成さんの粉引はミルクのようなやさしい白。
ロクロから生み出される美しい曲線。
様々なお料理を受け止めてくれるおおらかさのあるうつわです。
宇田康介さんの「粉引」
宇田康介さんの粉引は、ぽってりとした温かみのある雰囲気が特徴です。
しのぎの彫り模様や丸いフォルムがほっこりとした気持ちにさせてくれます。
村上直子さんの「粉引」
村上直子さんの粉引はどこかアンティークな雰囲気があります。
土に含まれる鉄分が表面に表れ、趣のあるうつわです。
お花をモチーフにしたデザインも特徴です。
鴻義成さんの「粉引」
鴻義成さの粉引はぽってりと覆う白化粧の色合いと質感が特徴です。
蹴ろくろで作られた非対称のフォルムとろくろ目がより化粧土の表情を際立たせています。
高台の雰囲気も見どころです。
粉引のうつわの楽しみ方
土の素地に化粧土や釉薬を重ねて掛けているため、ぽってりとした厚めの手触りと優しい風合いを感じます。
温かみのある白なので、みずみずしく鮮やかなサラダでも、和風の素朴な煮物でも美味しそうに盛り付けることができる懐の深さがあり、更に、長く使用している間に見た目の変化が少しずつ現れるという特徴があります。
このように「器を育てる」事により、一層愛着の湧くものとなっていきます。
粉引の器を扱う際の注意点
陶器とはもともと吸水性が高いものですが、特に粉引には、化粧土に生じた隙間から水分が入りやすい特徴があります。
醤油や油を多く含む水分は、洗って乾燥させた後もシミやにおいとして残る場合があります。
それらへの対策として、初めて使用する前には、米の研ぎ汁や小麦粉を溶いた水で器を煮る「目止め」をおすすめします。
また、お料理を盛り付ける前にお湯や水に器をくぐらせておくと、お料理の水分が器に入り込むのを防ぐ効果があります。
使用後はすぐに洗い流し、しっかり乾燥させる事も大切です。
いかがでしたか?
粉引のうつわの魅力を感じていただけたでしょうか?
ぜひ一度は手に入れて、自分だけのうつわに育ててみてくださいね。
きっとその魅力を感じて頂けると思います。