
【刻の余白、記憶のかたち】
参加作家:阿川まさ美(陶芸)/伊藤萠子(陶芸)/冨部咲喜子(陶芸)/西優樹(木工)
会期:2025/4/12(土)~4/20(日)
こんにちは。“ころは”の店主です。
4月12日(土)から開催する展示会のご紹介です。
日々の喧騒のなか、ふと立ち止まる瞬間。
指先に触れる器の温もりが、
過ぎ去った時間の余韻をそっと呼び覚ます。
幾度も土を捏ね、木を削り、かたちを生む。
静かに息づくその姿は、記憶の奥深くに染み渡り、
人の手に渡るたび、新たな物語を紡いでゆく。
刻を重ねるごとに心に寄り添い、
そばにあるだけで、暮らしに静かな灯をともす存在。
そんな作り手たちの、響き合う作品をご覧ください。
今回は「経年変化」というテーマで作家の皆さまに、制作への想いをお聞きしました。
作品と合わせてお楽しみください。
阿川まさ美さんの作品

阿川まさ美さんの作品には、まるで長い時間をかけて風化し、やがて石へと変わっていったかのような、独特の風合いがあります。
使う人のことを考え、うつわの内側には釉薬が施され、口に触れる部分には漆がそっと塗られています。細やかな心遣いが、手に取るたびに感じられるようです。
花器はまるで土器のような趣があり、そこにあるだけで空間の印象をがらりと変えてくれる存在感。
オブジェとしても、静かに佇みながら、どこか語りかけてくるような魅力を持っています。
ひとつひとつ、手びねりで生み出されるうつわと花器。
阿川さんの手のぬくもりと想いが込められた作品を、ぜひご覧ください。


「経年変化」と制作の想い
長年、時には世代を超えて使われている道具は、
時間の経過で作られた、というより
時間が経たないと手に入れることが出来ない景色を身に纏っている。
そこに使い手の暮らしぶりや思いなど、人間味が加わり、
その道具はより美しさ、愛しさを増していく。
誰かにとってそういうものとなる道具を作りたいと私は思っています。
伊藤萠子さんの作品

伊藤萠子さんの作品は、「野焼き」という、陶器のはじまりともいえる焼成方法で生み出されています。
縄文の時代、人々が土器を焼いていたのも、この野焼き。
雑木や落ち葉に火をつけ、土の中の水分をじっくりと飛ばして焼き締める、極めてシンプルな手法です。
ただ、伊藤さんのうつわは、一度電気窯で焼成することで、日々の暮らしの中で安心して使える強度を持たせています。
手の動きに素直に寄り添うように作られるかたちは、飾らず、あたたかく、どこか静か。
野焼きならではの、不規則で偶然が生み出す表情が、それぞれの作品に唯一無二の味わいを与えています。
時を遡るような、土の記憶を宿したうつわや花器。
ぜひ、その風合いを感じてみてください。


「経年変化」と制作の想い
電気窯で焼成し、野焼きをします。
作品の本質を捉えるまでその作業は繰り返されます。
それは、数百万年を経てできる粘土に宿った「時」を可視化する行為であり、
凝縮されたエネルギーとして誰かの暮らしへ寄与することを願っています。
冨部咲喜子さんの作品

冨部咲喜子さんのうつわは、まるで鉄器のような薄づくり。
ざらりとした質感に、ところどころ金属のような光が浮かび上がる。
その表情はどこか凛としていて、力強さと静けさが共存しています。
「温故知新」を大切にする冨部さんの作品は、昔ながらのぬくもりを感じさせながらも、
確かに今を生きる作り手の手のあとが残るもの。
釉薬の流れ、黒点の揺らぎ、一つとして同じもののない表情が、使うたびに新たな景色を見せてくれます。
懐かしくて、新しい。
そんな冨部さんのうつわ、ぜひ手に取って感じてみてください。


「経年変化」と制作の想い
鉄釉の器は使っていくうちに黒くしっとりとした色に変化しますので、日常に使っていただきその変化を楽しんでいただけたらと思います。
制作の想いとしては、大切に飾られて眺める器として楽しんでいただくことも良いと思いますが、毎日の食事に使いたくなるような器作りを目指しています。
器は、料理を盛り付けて完成だと思っていますので、他の器との相性やサイズ感にはこだわりをもって制作しています。
ぜひお手にとっていただけたら幸いです。
西優樹さんの作品

西優樹さんは、鹿児島県・屋久島の大自然の中で制作されています。
屋久島の木を使った作品は、育まれた木そのものの表情を大切にしながら、ひとつひとつ丁寧に削り上げたもの。
木目の流れ、かたちの個性、それぞれに異なる表情を持っています。
そしてもう一つ、蒔地のうつわ。
地の粉(砥の粉)と漆を幾重にも塗り重ねることで生まれる、独特の凹凸のある質感。
年月とともに漆は硬化し、光沢が増し、手の中で少しずつ育っていく。
使うほどに、そのものの味わいが深まっていく。
そんな変化を楽しめる、西さんのうつわたち。
ぜひ、じっくりと手に取って感じてみてください。


「経年変化」と制作の想い
作品作りについて ー
人の手では表現できない自然の造形を残しながら木を削り出すことで、
無機質な”モノ”ではなく、木が生きてきた名残を感じられる、
自然美と人工美の共存を大切にしています。
経年変化について ー
木のうつわは、育てる道具だと考えています。
つくり手から引継ぎ、使い込んだその先に木の道具としての完成があると思っています。
他の素材のうつわと比べて手がかかりますが、愛着を持って育て、その経年変化をお楽しみいただけると幸いです。
展示会詳細

【刻の余白、記憶のかたち】
参加作家:阿川まさ美(陶芸)/伊藤萠子(陶芸)/冨部咲喜子(陶芸)/西優樹(木工)
会期:2025/4/12(土)~4/20(日)
会場:ころは -うつわと道具と喫茶室‐
(〒673-0755 兵庫県三木市口吉川町大島55)
開催時間:11:00 ~ 16:30
(※ 月曜日と火曜日は定休日です。)
※混雑が予想される場合は、整理券をお配りする可能性がございます。
オンライン展示について:
会期後に準備が整い次第、オンラインにアップ致します。