
こんにちは。“ころは”店主です。
日差しの強い中歩いていると、喉はカラカラ。
こうも蒸し暑いと、心もイライラ。
氷を浮かべた冷たい水でも飲んで、すっきり気分になりたいものですね。
冷たい水と言えば、ふと思い浮かぶのがガラスのコップ。
見た目が涼しげなガラスのうつわは夏にぴったり。
今回は、夏に疲れた心を癒してくれる、「ゆらぎ」が魅力の吹きガラスを紹介します。
吹きガラスって?表情豊かな吹きガラスとは。

ガラス製品は様々ありますが、実は全てが同じ方法で作られているわけではありません。
吹きガラスとは、ガラス製品を手作りする際の技法の一つです。
吹き竿とよばれる金属管の端にガラス生地を巻き付け、反対の端から息を吹き込んでガラス生地を膨らませます。
ガラス生地は窯の中の坩堝(るつぼ)の中で1300℃程でドロドロに溶けたもの。
イメージとしては「灼熱の中で吹く重量級シャボン玉(笑)」?
とても大変な作業だと想像がつきますね。

気泡の入り具合や、ガラスの厚み、光の映り方。
平たんではないガラスの表面、均一ではないサイズ感。
工業製品のような「ピシッと感」はありませんが、うつわのひとつひとつに、それそのものの表情や個性があります。
写真のような、うつわの底に見えるのは「ポンテ跡」。
吹き竿から作品を切り離す工程で生まれるおへそのようなものです。
少し膨らんでいたり、ちょっぴりへこんでいたり。
これも、そのうつわが持つ、手作りだからこそのオンリーワンの個性です。
ガラスの“ゆらぎ”ってどんなもの?

「ゆらぎ」って、どんな感覚なのでしょうか。
この言葉には、「決心がゆらぐ」「水面がゆらぐ」といった、何となく不安定なイメージがありますね。
ところが、ある不安定さや不規則が人間に心地よさをもたらす効果があり、それを「ゆらぎ」と表現するのだそうです。
例えば、時折吹くそよ風。さざ波の音。
数年前に電化製品の宣伝で「1/fゆらぎ」という言葉を耳にしたことがある方もいることでしょう。
風の強弱が不規則に操作できる扇風機などが人気でした。
吹きガラスのうつわは、均等な製品にするために精密に設計されたものではありません。
だからこそ、ガラスのなだらかな不規則が、透かして見える風景をやさしく歪め、光を穏やかに映し、そこに「ゆらぎ」が生まれるのでしょう。
日課に縛られ、時間に追われ、定規で区切ったような毎日。
日々の生活の中に、そっと寄り添ってくれる「ゆらぎ」があれば、明日も頑張れそうですね。
あたたかな、ひんやり感のある吹きガラス

「あたたか」と「ひんやり」を同列に置いて、お読みの方にこの気持ちが伝わるのか、迷うところですが(笑)。
ガラスなので、ひんやり涼しげなのはもちろんなのですが、手作りならではの「あたたか」を感じさせてもくれるのです。
例えば、写真のうつわ。
両手で包み込むと、少し重みのあるやわらかな丸みがすっぽり収まり、なぜか生まれる安心感。
こちらの心の角まで丸くなりそう。

うつわをのぞき込むと、細かい気泡がランダムにぐるりと渦巻いています。
水の中にいるような。
水あめをとろりとすくい上げているような。
さまざまイメージが湧きあがります。
作家さんの、伝えたいイメージ。
使い手の、イメージを受け取り大切に使いたい気持ち。
ガラスにも、手作りのうつわだけに宿る「あたたか」があるのでしょうね。
やわらかな光を映す、やさしいゆらぎ

一見すると、シンプルな白いうつわ、でしょうか。
ガラスの表面に砂などの研磨剤を吹き付ける「サンドブラスト」という技法で、すりガラスのように白く加工しています。
この表面の白さは均一でなく、細かな濃淡のムラがあります。
上質の和紙に近いイメージかもしれません。
内側はつるりとした、透明感のある薄墨のようなグレイ。
光にかざすと白の濃淡のムラに、内側の色が滲み、やさしい藤色を感じられます。
角度を変えると、映る光の濃淡も変わり、いつまでも見つめていられそうです。

こんなふうに、光のもとで見ると、どの表情もやわらかに感じます。
うつわのもつ、穏やかないびつさや緩やかな不規則が、「光の真っ直ぐな強さ」を包み込んで、やさしい「ゆらぎ」に変えてくれているのでしょうね。
くたびれたり乾いたり。
忙しく過ごす日々に、疲れがたまったなぁ、って日もあることでしょう。
あなたにとってぴったりの「ゆらぎ」がどうか見つかりますように。
当店でも吹きガラスのうつわを数々取り扱っています。
ぜひ覗きにおいでくださいね。